石が叫ぶとはかなり異常な状態を示していますが、一般的には不正を告発するとか、あるいは殺された者の怨念の叫びとかいう場合に使われることが多いようです。それは無理やり押さえつけられたり、自由を奪われたりしている人々の中から沸き起こって来る魂の叫び、押さえても押さえてもあふれ出てくる自由への叫び、あるいは社会の不正を見ている人に対して、「あなたが黙れば石が叫ぶだろう」と言われる場合もあります。
これも、もともと新約聖書の中のエピソードに基づいている言葉で、おおむね原意に近い使い方だと言えますが、その聖書の場面ではイエス様のエルサレム入場を喜ぶ弟子たちや群衆が讃美の声を挙げたのに対して、それを制止しようとした人々に対して「もしこの人たちが黙れば、石が叫びます」とイエスは答えられたのです。軍馬ではなく平和の象徴としてのロバの子にのってエルサレムへ入場しようとするイエス様を群衆は歓迎し、神を讃美したのです。その素朴で自然な神への讃美を黙らせることはできないのです。
出典;新約聖書 ルカ福音書19;40