「70年の節目に立って」

・先日久しぶりに仙台市へ出かける所用がありましたので、予てから訪れたいと思っていた支倉常長の墓所を訪ねました。宣教師ソテロと並んで小さい石碑が据えられており、改めて400年前の彼らの足跡に思いをはせる機会となりました。帰途、広瀬川河畔にあるキリシタン殉教遺跡を訪れ、この地で厳寒の冬の川に漬けられるという残酷な拷問の末壮絶な最後を遂げられた殉教者たちのことを忍ぶ機会を得ました。
・碑の前にたたずみながら、私が今まで訪れた国内各地のいくつかの殉教記念碑が思い出され、感無量の思いに迫られました。今から400年前にこのような出来事が日本各地で起こってsendai-01.いたことが簡単には信じられないことです。我が国の先輩たちが、自分の家族や地位・財産、そして生命まで投げ出して貫いた「信仰」の強さにただ頭の下がる思いです。
・今年は戦後70年ということで過去に思いをはせる機会が多いのですが、私は半世紀以上前に「日本人はエコノミックアニマルだ」と揶揄され、軽蔑されたことを思い出すのです。敗戦後急成長を遂げ、経済大国と言われるまでに発展した我が国ですが、それと引き換えに大切なものを見失ってきたと言うことに気が付かなければならないと思うのです。経済がすべてに優先し、人間としての生き方に欠かせない内面的な部分への視点を失ってきたことは誠に残念としか言いようがありません。そして、深い反省もなくそのまま70年まで来てしまったことに今更ながら深い悔悟を覚えます。
・私は400年前に、多くの日本人が信仰というものに自分の命を賭して向き合ったという厳粛な事実に心を深く探られる思いです。人間としての生き方として絶対に見失ってはならない「こころ」の問題が、余りにも軽視されている昨今の日本の姿に深い憂慮を覚えるのです。政治も経済も、そして教育も今こそ考え直すべき時なのだと思います。4年前に来日されたブータン国王が提唱している「GNH(国民総幸福量)」を思い出したいのです。富による豊かさではなく、内面的な精神的な豊かさなのです。
・2000年前、キリスト悪魔との対決の場面で述べられた「人はパンだけで生きるものではなく、神の口から出る一つ一つの言で生きるものである」というあの有名な言葉は人類共通の課題なのかもしれないとは思いますが、現在の日本人にとって特に大切なメッセージであると思わずにはいられません。人間にとって何が一番大切なものか、瞬時に過ぎていく目先だけのものに心を奪われない生き方を考えたいのです。一日も早く「エコノミックアニマル」から脱却したいものです。             (S・M)

カテゴリー: 未分類 |