自分の命を懸けて

・1月10日のCNNは、6日の朝パキスタンの14歳の少年が学校に侵入しようとした自爆テロ犯を校門前で食い止め、爆発に巻き込まれて死亡した事件を報じていました。朝礼のため集まっていた数百人の生徒たちは、この少年のおかげで無事だったそうです。パキスタン北部カイバル・パクトゥンクワ州の学校に通う中学生のエティザズ・ハッサン・バンガシュ君のことで、彼は自分の命を懸けて仲間数百人を守ったのです。

・先日私は家のそばにある小学校の授業見学に招かれました。13年前の山手線新大久保駅で起こった痛ましい事件をテーマに道徳の特別授業が行われたからです。2001年1月26日夕方、ラッシュアワーで混雑していたホームから線路に転落した見知らぬ男性を救助しようと線路に飛び降りた韓国人留学生ともう一人の日本人カメラマンがとともに尊い命を失ってしまった惨劇です。今回その韓国人留学生のご両親も来校され、児童たちに直接語りかけてくれる特別授業でした。大変感銘深く伺い、改めて人の命の重みを考えさせられるひと時でした。

・いずれの場合も、自分のかけがえのない尊い命を犠牲にして、他人の命を救おうとした行為が強く迫ってきます。この方々はいずれもとっさの事として自分の危険をかえりみず飛び出して行ったのです。自分の命の大切さとか、家族のこととかを考える余裕はありませんでした。目の前に起こった状況を見るなり、あれこれ判断する暇もなくとっさに行動を起こしていたのです。彼らのうちには一切の損得勘定はなく、目の前にある人の命の大切さを思う心だけで行動が起こされたのだと思います。簡単に真似ることのできない尊い行動でした。報道では彼(イ・スヒョン)だけが大きく取り上げられていますが、現在の日韓関係を超えた人道的な見地から取り扱われているのかもしれませんが、もう一人日本人カメラマン関根史郎さんのことも忘れてはいけないと思います。

・私はここに「命より大切なもの」のひとつの姿を見ることができると思います。彼らには自分の命に代えてでも救わなければならない大切なものがそこに見えていたのです。星野富弘さんが言う「いのちより大切なもの」とはあるいはいささか異なるのかとは思いますが、自分の命を犠牲にしてでも守りたい、助けたいという対象があり、とっさにその行動が起こせる素晴らしさは敬服に値するものです。    (S・M)

カテゴリー: 未分類 |