心の福祉 <その2>

・かの有名なギリシャの哲学者ソクラテスは「心の養いのために哲学する」と言ったそうです。彼は、人間は肉体だけの存在ではない、心を持つ霊的存在であることを認識していました。そして肉体の養いのために食物が必要なように、その心の養いのために何が必要かを指摘したのです。

・敗戦のどん底から短い時間のうちに復旧をとげ、驚異的な経済発展をみせて世界第二の経済大国にまでのし上がった日本ですが、世界中から賞賛を浴びると同時に「エコノミック・アニマル」と揶揄されました。経済指標だけがバロメーターになり、かつてのわが国のよき伝統文化や社会の仕組みが大きく変質を遂げ、ついには教育までも経済至上主義に毒され、豊かな人間性を育むことを忘れるようになってしまいました。弱者に対する、福祉支援においても、物質的な支援が重視され、そこに心の通うものが見えなくなってしまいました。この経済発展と引き換えにわが国が失ったものは計り知れないものがあるように思えます。

・私はかつて文化予算をめぐって議論したことを思い出します。福祉の予算を如何に増やすか議論が進んでいた時に、ある文化事業の予算を削るようにという声が上がってきました。しかし私は「文化は心の福祉である」と言って反対しました。その信念は今も変わりません。本当の福祉は豊かな心から生まれるものだと今でも確信しています。

・社会福祉の需要はますます増大し、国家予算の中に福祉費の占める割合は高まる一方です。この傾向は当然の流れかもしれません。しかし経済的な支援だけで福祉が達成できると考えることはできないと思います。真に人間が豊になる道を考えて行きたいものだと思います。

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