宗教改革500年を迎えて

・2017年を迎えました。私にとっては今年位先行き不透明な空気の漂っている年は初めてです。昨年世界各地で起こった出来事が不安を引き起こしているのかもしれません。大方の予想を裏切ることが次々と発生してきて唖然した昨年でしたが、今年も引き続き何が起こるのかわからない予測しがたい状況になっているということがその原因なのだと思います。事実今年はヨーロッパ各国で重要な選挙が行われることになっていますので、その結果次第では世界全体が大きく方向転換をしかねない事態も考えられます。
・2016年度の英国のいわゆる流行語大賞に、ブリタニカが “Post truth”という言葉を選んだということですが、これを見ても選挙結果で動揺している人々の姿が見えてきます。20世紀後半になって築かれてきた世界のバランスが、また大きく様変わりしようとしているのです。この事態をどう捉え、どう対処するか難しいところですが、私はある意味で歴史上の大きな転換点に差し掛かっていると考えています。既成の価値観や社会構造が見直される時になるのかも知れません。
・奇しくも今年は宗教改革500周年に当たるというのも深い意味を感じます。宗教改革は西洋の歴史上エポックメーキングな出来事でした。それはキリスト教信仰の根源に関わることであり、深い内面的な事柄でもありますが同時に多くの民衆を巻き込み、社会や政治の在り方、経済活動までも大きく変えていくことにもなったのです。私は今こそこの偉大な歴史に学ばなければならない時ではないかと思います。ルターたち宗教改革者の基本的な姿勢を真剣に見つめなおすべきではないかと考えます。彼らは、既成の権威に依存しない大衆の持つ役割をはっきりと示したのです。伝統とか古の権威に依存することなく、一人一人が直接神の言葉に聴くことができると教えたのです。そのために聖書を母国語に翻訳し民衆が聖書を読めるようにしました。聖書を読み直接神の言葉に接することができるようになった民衆は、社会の変動にもぶれることなく自分で判断し行動する基準を得たのです。
・しかし歴史を見るとやはり社会の大きなうねりに巻き込まれ、自分の判断を見失ってしまった民衆の姿が多いのです。この500年間は残念ながら人間の弱さや足りなさが露呈してしまった悲しい歴史の積み重ねでもあります。しかし私は改めてこの歴史上の一大変革期をしっかりと見つめなおす大事な時を迎えていると思います。我々一人一人が社会の大勢に流されることなく、自己の判断基準を持つべきだと思います。私はその判断基準として、ルターが民衆に提示した「聖書」の言葉を再認識したいと思います。この一年、いろいろな角度でこの歴史的な大変革の時期を見直し、学んでいきたいと思います。   <S・M>

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