『私はあなたの神、主』
はじめに
本日の聖書箇所から、約束の地を前にしてモーセが再び十戒を語ったことを見ます。
Ⅰ．永遠に変わることのない主の契約と御言葉
モーセは、約束の地カナンに入る前に、およそ40年前に主が与えられた「十のことば」（十戒）を、再びイスラエルの民に語り聞かせます。それは40年の間に世代が交代し、今、モーセの言葉を聞いている人々が、最初に十戒を与えられた民の次の世代の人々だったからです。
モーセは、主が先祖たちと結んでくださった契約は、先祖だけではなく、今生きている全ての者たちのものであると語りました（申命記5:3）。主が結んでくださる契約は、主と共に歩み続けるあらゆる世代の人々を対象としているからです。すなわち、主の民であるとは、血縁によるのではなく、神の契約によって結ばれていることによるからです。主イエスは、「天におられるわたしの父のみこころを行う者はだれでも、わたしの兄弟、姉妹、また母なのです。」（マタイ12:50）と語られました。
私たちクリスチャンが主によって救われ新しく生まれたのは、「生ける、いつまでも変わることのない、神のことばによるのです」（Ⅰペテロ1:23）。この主の御言葉は、「とこしえに変わること」がありません（イザヤ40:6-8）。主の変わることのない契約を信じ、御言葉に堅く立って信仰の歩みを続けましょう。
Ⅱ．主の契約に生きる自由な者として歩む
主なる神が与えられた「十のことば（十戒）」は、神の救いを受け、契約の民、神の家族とされた民が、常にこの御言葉に立ち帰り、何度も聞き続けなければならない言葉でした。それは、昔のイスラエルだけではなく、現代の私たちクリスチャンも聞かなければならない命の御言葉です。
主は、イスラエルの民に「わたしはわたしの律法を彼らの中に置き、彼らの心にこれを書きしるす。わたしは彼らの神となり、彼らはわたしの民となる。」（エレミヤ31:33）と新しい契約を結ぶことを約束されました。これは、主イエスの十字架のみ業によって、成就しました（Ⅱコリント3:3）。新しい契約によって、罪の奴隷から解放されて神の民とされたのですから、「自由人として行動」しようではありませんか（Ⅰペテロ12:16）。
主イエスは、律法をことごとく成し遂げてくださり（マタイ5:17）、十字架の死によって、私たちのために完全な罪の赦しを実現してくださいました。私たちは、主イエスの十字架の贖いによって、新しい神の民とされました（ガラテヤ3:6）。ですから、クリスチャンはその主の偉大な恵みに応えて主に従い、感謝して自分自身を生きた聖なる供えものとして主に捧げて仕えるのです。主の愛に、私たちが応答することによって、主との深い交わりに生かされることを覚えましょう。
Ⅲ．唯一真の神を神とせよ
主は、「十のことば」を語られる前に、ご自身のことをエジプトの国、奴隷の家から連れ出した「あなたの神、主である」と語られました（申命記5:6）。それから第一の戒め、「あなたには、わたしのほかに、ほかの神々があってはならない。」（申命記5:7）と告げられました。「十のことば」は、救いの恵みや豊かな祝福など、あらゆる良きものの源は主なる神にある、ということをわきまえて、主との交わりに生きるために必要な御言葉です。
これを、新しい神の民とされた私たちキリスト者の信仰において言い直すなら、次のように言うことができます。父なる神は、ひとり子イエスを遣わして、御子の十字架の死と復活によって私たちのいっさいの罪を赦し、新しい神の民として救ってくださいました。ですから、「私たちは、イエス・キリスト以外に、他の神々があってはならない」のです。
私たちの人生の歩みに起る全てのことは、神の許しの中にあります。ですから、第一の戒めである、真の神以外に神があってはならないとは、私たちの人生の歩みの全てに、主なる神が常に共におられて、導いておられることを認めなさいということを示しています。先に父なる神は、そのひとり子イエスさえも惜しまずに、私たちの救いのためにすでに最も善きものとして与えてくださいました。主の御言葉に従い、主にのみ信頼する時、私たちは、この世のいかなる困難や苦しみにも打ち勝つ力を頂き、真実の希望を抱いて、自由にされた者に相応しく生きることができることを覚えましょう。
結 び
主は、「わたしはあなたがたの神である」と宣言されて、イスラエルの民をエジプトの奴隷から解放して、自由な神の民として生きるようにと、十戒を与えられました。十戒は、主への感謝の生活のための道標として、今日の私たちにも語っています。私たちは、主イエスの十字架の贖いによって、新しい契約に生きる民とされました。御言葉を基として、聖霊に導かれて、主と共に歩み続けて行きましょう。
