『聖霊の初穂』
はじめに
本日の聖書箇所から、聖霊の初穂を与えられたキリスト者の歩みについて見てまいります。
Ⅰ．待ち望まれている神の子どもたちの現れ
パウロは、人の様々な苦しみを人間界だけではなく、被造物全体の苦しみとして述べています。人間の罪は、主との正しい関係を壊したばかりでなく、被造物に対しても混乱を起こしました。それ故に、被造物すべてが本来の人間による正しい管理を願い、切実な思いで神の子どもたちの現れを待ち望んでいます（ローマ8:19）。「神の子どもたち」とは、父なる神と人との本来の関係を回復された、主の救いを頂いた者たちのことです。全ての被造物でさえ人の救いを願っているなら、主はなおのこと、私たちが主の救いを受け取ることを待ち望んでおられます。人の救いを願う父なる神の熱心は、そのひとり子を、私たちの救いのために十字架にかけるというみわざに示されました（ヨハネ3:16）。
主イエスの十字架の贖いによって神の子とされた私たちは、神の子にふさわしく、主と共に歩んで行きましょう。また、主のみ心を自分の心として、魂の救いのために執り成しの祈りをし、主を証しして行きましょう。
Ⅱ．聖霊の初穂を頂く
パウロは、「心の中でうめきながら、子にしていただくこと、すなわち、私たちのからだの贖われることを待ち望んでいます」（ローマ8:23）と語りました。これらの願いが完全に実現するためには、私たちは主の再臨の時まで待たなければなりません。しかし、私たちは今すでに、「子としてくださる御霊を受け」て、神を「アバ、父よ」と呼ぶ生活に招き入れられています（ローマ8:15）。神の子として歩む人生は、すでに始まっています。このような者たちのことを、パウロは「御霊の初穂をいただいている」者と述べています。
「初穂」とは、次の完全な収穫があることを意味しています。今、聖霊によって、罪や死の恐れから解放されていること（Ⅱコリント5:17、Ⅰコリント15:55）、からだが贖われていること（Ⅱコリント4:16）などを、この世においても経験させていただいているのです。これらは、主の約束を頂くための「初穂」であり、キリスト者の受け継ぐべき嗣業の前味のようなものです。
さらに、クリスチャンが「御霊の初穂をいただいている」とは、主が約束してくださった永遠の命の付与と（エペソ1:14）、御国を受け継ぐ者としての保証です（ローマ8:14）。聖霊は、主イエスの十字架の贖いの意味を教え、主の大いなる愛を教えてくださっています。聖霊によって、主イエスをなお深く教えて頂き、主が与えてくださる約束を信じて期待しましょう。
Ⅲ．忍耐を持って熱心に主を待ち望め
パウロは、「将来私たちに啓示されようとしている栄光」（ローマ8:18）について教えています。この望みは、今はまだ肉眼の目で見ることはできないものです。しかし、それだからこそ、消えてしまうことのない真の望みなのです（ローマ8:24）。この世にある見える望みは、どんなものであっても、やがては消えてしまいます。ですから、この世の望みは失望に終わってしまうのです。主が与えてくださる望みは、いかなる状況においても消えることはありません。消え去ることのない、永遠の望みだからこそ、これに信頼する者は失望することはなく、苦しみにも耐える力を与えられ、確信を持って待ち望むことができるのです。
見えないものに目を開いてくださる聖霊の導きと、御言葉に堅く立つなら、私たちは忍耐を持って待ち望むことができます。また聖霊は、主イエスを指し示してくださり、信じる者たちの内に志を立てさせ、事を行わせてくださり、主イエスの再び来るまでにそれを完成させてくださいます（ピリピ1:6）。堅く立って、動かされることなく、いつも主のわざに励みましょう。私たちの主に対する労苦は、無駄になることはないのですから（Ⅰコリント15:58）。
結 び
全てキリスト者は、主なる神から「御霊の初穂」を頂いた者です。「御霊の初穂」とは、救いの完成の日を目指して歩み続けられるようにと、神を「アバ、父よ」と呼び、主との愛の交わりに生きるようにしてくださったことです。また、「キリストとの共同相続人」であるという、偉大な望みに生きる者とされたことを意味しています。私たちは御霊と共に歩み、御言葉に堅く立って、永遠の御国を目指して、今置かれているところを歩んで行きましょう。
