『隠れた神の備え』
サムエルは最後のさばきつかさとしてイスラエルを統治し、また、預言者として、イスラエル王国を建てあげて行く二人の王（サウル、ダビデ）に関わった人です。今朝はご一緒に、サムエルの誕生に関わる、主の御手の業をご一緒に見てまいりましょう。
Ⅰ．苦しみを益としてくださる神
サムエルが生まれたのは、士師の時代の終わり頃でした。「そのころ、主のことばはまれにしかなく、幻も示されなかった」（Ⅰサムエル3:1）とあるように、イスラエルは、霊的に、暗黒の時代の中にありました。これは、イスラエルが主の言葉に従わなかったために招いた結果でした。
主は、そんなイスラエルに新たな霊的指導者サムエルを用意されました。この人の誕生のために、主はその母ハンナを用いられました。ハンナは、夫エルカナの側妻ペニンナによって、子がないことで悩まされていました。ハンナに子がないのは、「主が彼女の胎を閉じておられた」（Ⅰサムエル1:5）からであったと聖書は語ります。
子どもがないということで、側妻に悩まされ続けたハンナの孤独や苛立ち、悲しみは、ハンナを愛する夫によっても慰め得ないものでした。ハンナは、その辛さ故に、心を主に注ぎ出して祈らざるを得なかったのです（Ⅰサムエル1:15）。
主は、ハンナの祈りを聞き入れてくださっただけではなく、祈りを遙かに超える御業を成してくださいました。私たちも大きな問題や心悩める苦難が押し寄せてきたとき、その心と思いとを主に向けて、心を注ぎ出して主に祈ろうではありませんか。主にある苦しみを通ってもなお、詩篇の信仰者のように「苦しみに会ったことは、私にとってしあわせでした。私はそれであなたのおきてを学びました。」（詩篇119:71）と心から告白できることを感謝しましょう。
Ⅱ．ハンナの祈り
ハンナは、長い年月に渡る苦難のため「主に祈って、激しく泣いた」（Ⅰサムエル1:10）のです。この彼女の心注ぎ出す祈りによって、祈り自体が主によって変えられます。彼女の状況は、今までと全く変わってはいなくても、彼女の内面は信仰によって変えられ、「万軍の主よ。もし、あなたが、はしための悩みを顧みて、･･･このはしために男の子を授けてくださいますなら、私はその子の一生を主におささげします。」（Ⅰサムエル1:11）と、全てを主に捧げるという信仰の祈りになりました。
祈りの中で主に取り扱われたハンナは、その表情さえも変わっていました（Ⅰサムエル1:18）。それは、信仰によって、全てのことを主が益にしてくださるということを信じた者だけが経験できる平安です。「何も思い煩わないで、あらゆる場合に、感謝をもってささげる祈りと願いによって、あなたがたの願い事を神に知っていただきなさい。そうすれば、人のすべての考えにまさる神の平安が、あなたがたの心と思いをキリスト・イエスにあって守ってくれます。」（ピリピ4:6-7）私たちの罪の贖いのために、ご自分の御子をさえ惜しまずに死に渡された方は、御子といっしょに全てのものを、私たちに恵んでくださることを信じましょう（ローマ8:32）。
Ⅲ．隠れた主の備え
主は、霊的な混乱時代にあって、民を主に向けさせる預言者サムエルを起こし、彼にイスラエル王国建設のための重要な二人の王に、任職の油注ぎを行う使命を与えました。
主は、一人の女性の切なる祈りに答えて、主の働き人を起こしてくださいました。しかし、それ以前に、主ご自身が、主の御心を忠実に行う働き人をイスラエルに立てようと計画されていたのです。「わたしは、わたしの心と思いの中で事を行う忠実な祭司を、わたしのために起こそう。」(Ⅰサムエル2:35) 主の熱心は、私たちの熱心をはるかに越えています。
主は御自身の御計画のために、隠れたところで人を探し、主の御業のために準備を進めておられます。「主はその御目をもって、あまねく全地を見渡し、その心がご自分と全く一つになっている人々に御力をあらわしてくださるのです。」（Ⅱ歴代誌16:9）私たちも主イエス・キリストによって探し出され、主イエスの命によって罪から贖い出された者であることを感謝しましょう。そして、この時代に、福音を伝える者として主に用いられようではありませんか。
結 び
ハンナの苦しみは、主が介入されると逆転し、彼女の願いを遙かに超えた祝福となりました。彼女は、主からサムエルという子を与えられると同時に、イスラエルに預言者を送り出すという、大きな主の働きをも担ったのです。人の力には限度があり、人生で直面する理不尽な事に完全に勝利することは不可能なことです。しかし、主は私たちの将来に対するご計画を知っておられ、災いではなく、希望と平安を与えてくださいます（エレミヤ29:11）。あらゆる時に、私たちを主の働きのために備えさせてくださる主は、いま私たちが置かれているところで、勝ち得て余りある勝利を与えてくださることを信じてまいりましょう。
