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『救いの時のしるし』

説教:高橋正人 牧師
聖書箇所 マタイ16:1-12

今朝の箇所は、マタイ福音書の分水嶺といわれるところです。主イエスは、ここからいよいよ十字架に向かって行かれますが、その前に弟子たちに警告をされました。

Ⅰ.時のしるしを求めたパリサイ人たちとサドカイ人たち

  • 主イエスをためそうと、仲の悪かったパリサイ人やサドカイ人たちが一緒になって、「天からのしるし」を求めました。彼らの思いは、自分たちの宗教的な権威で、主イエスが救い主であるか否かを判断しようというものでした。
  • これに先立ち、バプテスマのヨハネが、獄中から彼の弟子たちを通して、「おいでになるはずの方は、あなたですか。それとも、私たちは別の方を待つべきでしょうか」と主イエスに問いました。主イエスの答えは、彼の弟子たちが主イエスについて聞いたり見たりしたことを、ヨハネに報告しなさいというものでした。それは、「目の見えない者が見、足のなえた者が歩き、ツァラアトに冒された者がきよめられ、耳の聞こえない者が聞き、死人が生き返り、貧しい者たちに福音が宣べ伝えられている」(マタイ11:2-5)という、イザヤ35:5-6イザヤ61:1に預言されていた救い主の姿でした。
  • 主イエスが行っている御業を見るならば、主イエスこそが救い主であるということは明らかでした。しかし、パリサイ人やサドカイ人たちは、救い主としてのしるしを示す主イエスの数々の奇跡や力ある業を見ていたにも関わらず、それらを悪魔の力によるとまで言って(マタイ12:24)受け入れず、自分たちの基準に当てはまる、彼らにとって都合の良いしるしを示すようにと主に求めたのです。
  • 信仰は、パリサイ人たちやサドカイ人たちのように、自分たちが思い願っていることをしてみせてくれるなら、あなたを主と判定しますというものではありません。そのような態度は、信仰ではなく、むしろ主を畏れない自己中心的な態度です。主イエス御自身が、最大の救いの「しるし」です。群衆が「私たちは、神のわざを行うために、何をすべきでしょうか」と問うた時、主イエスは「あなたがたが、神が遣わした者を信じること、それが神のわざです」(ヨハネ6:29)と答えられました。 私たちは、主イエスにおいて、神が生きて働いておられるということのしるしを見ているでしょうか。 主イエスは「きのうもきょうも、いつまでも、同じ」(ヘブル13:8)、私たちを生かしてくださるお方であることを信じ、主に感謝してまいりましょう。

Ⅱ.パン種の教訓

  • この後、主イエスは弟子たちを連れて、向こう岸に行かれました。この時、主イエスは、彼らに「パリサイ人やサドカイ人たちのパン種には注意して気をつけなさい」(マタイ16:6)と警告されました。ここで主イエスが言われた「パン種」とは、主の大いなる御業を見ているのにそれを認めようとしない頑な心、高慢な心のことです。
  • このような態度は、一言でいうなら人の罪から生じるものです。私たちの「肉の性質」は、最初は小さくて目に見えないようなものであったとしても、パン種がパンを膨らませるように私たちの心を容易に支配してしまうことがあると、主は警告を与えています。パウロも述べているように、そのようなパン種に、私たちは注意が必要です(Ⅰコリント5:6)。
  • すでに、私たちは悪いパン種ではなく、良いパン種を与えられたのです。主イエスこそ、命のパンであることを覚えましょう。また、私たちの内に与えられた御言葉は、辛し種のように小さくても、成長してどの野菜よりも大きくなるように、私たちの内に働いて、キリストにある救いに導いて下さいます。からし種ほどの信仰であっても、信仰には山をも動かす力があると主は語られました(マタイ17:20)。御言葉の種は、私たちが主から与えられているものを聖めて、主の尊い御用のために用いてくださるように働きます。私たちが心に植え付けられた御言葉に素直に聞き従っていくなら、悪いパン種が入り込む余地はないのです。

結 び

私たちは主イエスが警告された「パリサイ人やサドカイ人たちのパン種」に注意しなければなりません。主が私たちに御霊を注いで、救いの確信を与え、神の支配を思い起こさせてくださっていることを感謝してまいりましょう。彼らのように、自分の作り出した神観で信仰生活をしたり、主の御業を限定してしまったり、否定することのないように聖霊によって霊の目を開かせていただきましょう。信仰の根拠はこの世のものではなく、ただ主イエス・キリストにだけあるのだということを覚えてまいりましょう。

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