礼拝説教

『私達を楽しませてくださる神』

はじめに

伝道者の書の著者は、自分を「エルサレムでの王、ダビデの子、伝道者（コヘレト）」（伝道者1:1）と紹介します。「空の空。すべては空。」（伝道者1:2）ではじまるこの書物は、一見すると人生のむなしさを強調しているように思われるかもしれません。しかし、著者がいかなる人物であったとしても、神を畏れる信仰者であるということは確かです。今朝は、この書を通して「神にある楽しみ」について見てまいります。

Ⅰ．伝道者（コヘレト）は人生をありとあらゆる方法で探求した

• コヘレトは人生の意味と目的を知るために、快楽の限りを味わい尽くそうと試みました。
• 彼は事業を拡張し、邸宅を建て、ぶどう畑を設けたりして、彼より先にエルサレムにいただれよりも偉大な者となりました（伝道者2:5-9）。彼は、自分の莫大な費用と労力を快楽を追求することに用いました。
• コヘレトは、快楽を追求した後に、もう一度、知恵を得ようとしました。知恵の本質を知るためには、狂気や愚かさと比較する必要があります。「私は振り返って、知恵と、狂気と、愚かさとを見た。」（伝道者2:12）
• 彼は物質的なことにおいても知識においても、全てのものを手に入れ、体験したのですが、行き着いた結論は、「すべてがむなしいことよ。風を追うようなものだ。日の下には何一つ益になるものはない」（伝道者2:11）ということでした。コヘレトはありとあらゆることをこころみた結果、神から離れた人生の不条理を目の当たりにしたのです。
• 振り返って、私たちの周囲ではどうでしょうか。コヘレトが言うように、多くの人々が人の努力や知恵や支配の及ばない不条理さを目の当たりにして、人生に意味を見い出せないでいるのではないでしょうか。
• コヘレトは生きることは空しい、「私は生きていることを憎んだ」（伝道者2:17）とさえ言いました。しかし、これは彼の到達した本当の結論ではありません。
• コヘレトの結論は、「実に、神から離れて、だれが食べ、だれが楽しむことができようか」（伝道者2:25）とあるように、神から離れた人生には意味を見出すことはできないということです。「結局のところ、もうすべてが聞かされていることだ。神を恐れよ。神の命令を守れ。これが人間にとってすべてである。（伝道者12:13）

Ⅱ．新約に生きる私たち

• コヘレトはこの世が不条理極まりないことを見ましたが、「神は、善であれ悪であれ、すべての隠れたことについて、すべてのわざをさばかれるからだ」（伝道者12:14）と、神の領域に於いてこの世の不条理さを越えた、神の正しいさばきがあることを確信しています。
• 私たち新約に生きるキリスト者は、この世の究極の不条理である「死」に対して、完全な勝利をしてくださったキリストの十字架の贖いを知っている者です。キリストは私たちを死の支配から解放し、命へと移してくださいました。
• 私たちクリスチャンが知る知恵は、神のひとり子であり、知恵そのものである主イエス・キリストが神を信じる者に与えられているということです（Ⅰコリント1:26-31）。私たちは神を知る知恵の故に、死は終わりではなく、神が再びよみがえらせてくださるという望みがあることを知るのです（Ⅰコリント15:12-22）。神から与えられた命は、主を信じた時から与えられています。私たちはパウロと同じように、「生きることはキリスト、死ぬこともまた益です」（ピリピ1:21）と告白できるのです。福音の豊かな恵みに生きる者と変えられていることを喜ぼうではありませんか。

結　論:真の楽しみは神から与えられる

• 私たちは、コヘレトが人間の心に関しての壮大な実験結果を残してくれたことを感謝しましょう。コヘレトは、人はこの世の快楽や幸せ、夢のような理想を求めて努力をしますが、そこに神がいなければ本当の満足はないのだということを教えています。
• 私たちは、神から与えられているもので楽しみ、満足することを許されているのです。「神は、みこころにかなう人には、知恵と知識と喜びを与え」（伝道者2:26）とある通りです。
• 楽しみは、まさに神を知り、神を信じて生きる時に神から与えられるものです。「たよりにならない富に望みを置かないように。むしろ、私たちにすべての物を豊かに与えて楽しませてくださる神に望みを置くように」（Ⅰテモテ6:17）しようではありませんか。