とりなしの祈り
はじめに
テモテヘの手紙は、使徒パウロが若い同労者であるテモテに、牧会について教え励ますために書き送ったものです。テモテが牧会する教会の中には、主イエスの福音とは異なった教えが入り込んで来て、教会の中に混乱が起こっていました。テモテに宛てた個人的な手紙ですが、その内容は普遍的なものであり、中心的な主題は「神の家（教会）でどのように行動すべきか」ということです。
Ⅰ．健全な教会と個人の成長は祈りから始まる。
パウロはテモテに、教会のあるべき姿として一つの命令を与えています。その命令とは「きよい心と正しい良心と偽りのない信仰とから出て来る愛」（Ⅰテモテ1:5）をもって、主との豊かな命溢れる交わりに生き、兄弟姉妹と共に生きることです。この信仰から生まれる愛があるなら、教会が聖書以外のさまざまな教えによって振り回されそうになっても、動揺せず主との関係に堅く守られます。
確かに教会という共同体には、さまざまな人々が集いますが、主の愛によって一致しています。これはまさに主にある恵み、奇跡以外のなにものでありません。教会は主の愛による一致がある時のみ、強力に前進するのです。一致があるところに、主はあふれる命を流してくださいます。それが教会のさまざまの働きに及び、教会は健全に成長して行きます。私たちは何をさておいても、御霊による一致を求めて行きましょう。そのために、日々の祈りという主との交わりを通して、御霊に満たされ続けましょう。
Ⅱ．主の御心にかなった祈りが信仰の成長をもたらす。
祈りは、教会と個人とを健全に成長させていく力であり、クリスチャン成長に欠かすことの出来ないものであることをパウロは言っています。祈りは「信仰の破船」（Ⅰテモテ1:19）から私たちを守る強力な武器です。「そこで、まず初めに、このことを勧めます。すべての人のために、また王とすべての高い地位にある人たちのために願い、祈り、とりなし、感謝がささげられるようにしなさい」（Ⅰテモテ2:1）
教会の成長の尺度としてパウロが最も重要視していたのは、単に人数、財力が増し加わっていくことではなく、教会にある一人一人がキリストに似る者として成長することにありました。教会の組織が整えられることや知恵を出し合って計画を立てることも大事ですが、それ以上に大切なのは、御霊によるとりなしの祈りです。私たちの働きの全ては、このとりなしの祈りによって貫かれたものでなくてはなりません。私たちが祈りにおいて自分自身を捧げて行くとき、御霊は私たちのうちにあってとりなし、神の御心に沿った祈りに導いてくださいます。「御霊も同じようにして、弱い私たちを助けてくださいます。私たちは、どのように祈ったらよいかわからないのですが、御霊ご自身が、言いようもない深いうめきによって、私たちのためにとりなしてくださいます。」（ローマ8:26）
Ⅲ．全ての人が救われて真理を知るようになるために
パウロは最初に、すべての人のために祈るべきことを教え、次に、王とすべての高い地位にある人たちのために祈ることを勧めています。為政者たちの為に祈ることは、一見すると教会の働きや個人の信仰生活とは直接関係のないことと思えるかもしれません。しかし、「私たちが敬虔に、また、威厳をもって、平安で静かな一生を過ごすためです。」（Ⅰテモテ2:2）とあるように、全ての人のために祈ることの祝福の一つは、それによって私たちのうちに揺らぐことのない平安が与えられることにあります。為政者たちのために祈り、とりなすと同時に、なぜ「感謝がささげられる」（Ⅰテモテ2:1）ようになるのでしょうか。それは彼らのためにとりなすことによって、「すべての人が救われて、真理を知るようになるのを望んでおられ」（Ⅰテモテ2:4）る、神の御心を私たちが知るからです。パウロは、その主の御心を知り、失われた魂に対する主の愛に押し流されて宣教に出ていきました。今私たちのうちに、主の御心に突き動かされたとりなしの祈りが燃えているでしょうか。
結 び
「キリストは、すべての人の贖いの代価として、ご自身をお与えになりました」（Ⅰテモテ2:6）。キリストの贖いは全ての人を救うのに有り余る恵みのわざです。今朝、私たちはこの主の大いなる恵みに応えて、祈りの器として主に用いて頂くために、私たち自身をもう一度ささげてまいりましょう。「そうすることは、私たちの救い主である神の御前において良いことであり、喜ばれることなのです。」（Ⅰテモテ2:3）
