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主に捧げる祝福

説教:高橋正人 牧師
聖書箇所 マタイ22:15-22

パリサイ人たちとヘロデ党の者たちが一緒になって、主イエスに、ローマ皇帝に税を納めることが律法にかなっているか否かという質問をしました。この質問は、当時のユダヤ人が一般的に抱いていたものですが、彼らはそれを利用して主イエスをことばのわなにかけようとしたのです。

イスラエルはこの時代、ローマ帝国の支配下にあり、ローマへの税を皇帝の肖像が刻まれた貨幣で納めることになっていました。ユダヤ人にとって、何かの像を刻むということは律法の教えに反することであり(出エジプト20:4)、そんな貨幣を使うことも、それをもって納税を強いられることも信仰的に受け入れられることではありませんでした。また、自分を神と称する皇帝の占領下にあることも屈辱的なことだったのです。そのような状況で、もし主イエスが税をローマに納めなくても良いと言ったなら、ローマ帝国や国主ヘロデに対する反逆と見なされかねませんでした。逆に、納めるべきであると答えたなら、カイザルを神と認め帝国を受け入れることに同意したとして、パリサイ派の人々や一般のユダヤ人からも怒りをかうことになります。つまり、この質問はどちらにしても、答えた者を窮地に追い込む悪意に満ちたものでした。

しかし、主イエスはこの質問の背後にある悪意と偽善を見抜いて、驚嘆すべき答えをされたのです。「カイザルのものはカイザルに返しなさい。そして神のものは神に返しなさい」(マタイ22:21)。パリサイ派もヘロデ党の者たちも主イエスの答えに返す言葉を失ったことでしょう。この答えは質問者たちの悪意と偽善のある問いを、完璧に、しかも一言で負かす知恵あるものだったからです。主イエスは人の知恵をはるかに越えた神の知恵をもって、背後に働いていた悪しき者を撃退されたのです。

主イエスの言葉には、人は神の慈愛と憐れみの中で生かされ、一国民として恵みのうちに存在しているということが含まれています。もともと世は主によって造られたのです(ヨハネ1:10)。ですから、たとえ皇帝(カイザル)が地を統治していたとしても、その皇帝もまた主の支配下にあります。私たちは、国や社会がどのような状況の中にあっても、それらを越えて主が統治しておられることを知り、上に立つ指導者たちのために祈りつつ、置かれたこの時代と社会にあって主に仕えなくてはなりません。

主イエスが私たちのところに来てくださり、福音を宣べ伝えてくださったのは、神の国を建てるため、神の支配を明らかにするためでした。私たちはこの地上の国にあって天の御国の市民として生かされている幸いを自覚し、主に全信頼をもって従って行きましょう。 主イエスが「神のものは神に返しなさい。」(マタイ22:21)といわれたとき、「神のもの」とは何を指すのでしょうか。ローマのデナリ貨幣には皇帝の姿が刻まれていましたが、私たちには「神の姿」が刻まれています。「神はこのように、人をご自身のかたちに創造された。」(創世記1:27)神のもの、それは「私」であり「私たち」です。私たちは、この私自身を神に捧げるのです。主に自分自身を捧げるとは、主イエスを、心を尽くし、思いを尽くし、知力を尽くして愛することです。更に、私の人生は主のものであり、主のものとして生きるというのが、「神のものを神に返す」ことです。主イエスは自ら十字架にかかってくださり、ご自身を私たちに与えてくださいました。それによって私たちは罪赦され、神の恵みと永遠の命に生かされています。主イエスを与えてくださった父なる神に感謝しましょう。主への感謝の応答として、自分自身を捧げるとき、主はそれを喜んで受け入れて下さり、再び私たちを豊かに祝福してくださることを覚えましょう。豊かに捧げる者は、豊かな恵みを主からいただくのです(Ⅱコリント9:6)。

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