『神の選びの器として』
はじめに
教会の迫害者サウロは、ダマスコ途上で復活の主イエスに出会い、まったく造り変えられ、使徒パウロとして世界宣教に遣わされて行きます。その背後には、アナニヤという一人のクリスチャンの忠実な奉仕がありました。
１．目から「うろこ」を落としてくださる主イエス
ユダヤの最高議会からクリスチャンを捕縛する権限を委託された「使徒」として、ダマスコに向かう途上にあったサウロ(パウロ)は、突然、復活の主イエスに出会います。それまで、クリスチャンを迫害することにより「自分は神に奉仕しているのだ」(ヨハネ16:2)と考えていたパウロでしたが、「サウロ、サウロ。なぜわたしを迫害するのか」(使徒9:4)との主イエスのお言葉が青天の霹靂のようにパウロの心を刺し通し、結果、彼は人生を転換させる深い悔い改めに導かれます。
主イエスはパウロに「とげのついた棒をけるのは、あなたにとって痛いことだ」(使徒26:14)とも語られました。熱心に宗教(ユダヤ教)に生きていたパウロでしたが、そこに命と平安と喜びはありませんでした。むしろ、教会を迫害することにより自分自身を傷つけていた者、それがパウロの真の姿でした。人は皆、復活のイエス・キリストの光に照らされて初めて、自分の本来の姿を知るようになります。
キリストの恵みと命に生きる者と変えられたパウロの「目からうろこ」(使徒9:18)が落ちました。しかし、忠実な主の弟子であったアナニヤもまた、パウロのもとに遣わされる前に、新しく目を開かれる必要がありました。「あの人はわたしの名を、異邦人、王たち、イスラエルの子孫の前に運ぶ、わたしの選びの器です」(使徒9:15)との主のお言葉は、アナニヤにとっての「目からうろこ」であったことでしょう。
私たちは、ともすると、様々な情報・人の知恵・常識という「うろこ」で信仰の目が塞がれてしまう傾向があります。しかし、主は、み言葉と聖霊によって、私たちの目を新しく開いてくださるお方です。いつも主によって「目からうろこ」を落として頂き、信仰の目を開いていただきましょう。「あなたがたの心の目がはっきり見えるようになって、…神の全能の力の働きによって私たち信じる者に働く神のすぐれた力がどのように偉大なものであるかを、あなたがたが知ることができますように」(エペソ1:18-19)。
２．主の選びの器として
パウロもアナニヤも、共に「選びの器」(使徒9:15)として主に用いられました。イエス・キリストを信じる者は、一人ひとりが主の御名を運ぶ「選びの器」です。キリストのからだの各器官として、一人ひとりの働きは異なりますが、皆がかしらであるキリストの心を心とし、宣教という一つの大きな使命のために選ばれていることを覚えましょう。「しかし、あなたがたは、選ばれた種族、王である祭司、聖なる国民、神の所有とされた民です。それは、あなたがたを、やみの中から、ご自分の驚くべき光の中に招いてくださった方のすばらしいみわざを、あなたがたが宣べ伝えるためなのです」(Ⅰペテロ2:9)
パウロが使徒として立てられたのは、主の御名のために「どんなに苦しまなければならないか」(使徒9:16)を知るためでもありました。主の証人として生きることは、決して何ごとも無い平坦な道を歩むことではありません。むしろ、私たちが真にキリストの証人として歩むとき、必ず試練と困難を通らされます。
苦しみは、キリスト者にとって自らを潰すものではなく、むしろ建て上げるものです。試練や苦難を通る時こそ、私たち以上に苦しみを味わわれ、人に捨てられ、ついには十字架上で死なれた主のもとに、何度でも立ち返っていくことができます。これは大きな慰めであり恵みです。十字架のもとに行くときにのみ、人知をはるかに越えた神の愛を知るからです。「それは、私たちにキリストの苦難があふれているように、慰めもまたキリストによってあふれているからです」(Ⅱコリント1:5)
まとめ
私たちは、困難や問題が起こると、人間的な方法を用いて解決しようとします。しかし、ヨシャパテ王が取助け主である聖霊は、私たちの目を開き、主の愛と、生ける真理のみ言葉に導いてくださいます。聖霊に聞き従うことによって、初代教会は、迫害と困難の中、人間の目には想定外の時と状況において、宣教の突破口が開かれていくのを目の当たりにしました。アナニヤとパウロの上に先手を打って働かれた主は、私たちをも変わらない御手をもって導いてくださいます。いつも心を主に向けて歩んでまいりましょう。「私は、キリストのために、弱さ、侮辱、苦痛、迫害、困難に甘んじています。なぜなら、私が弱いときにこそ、私は強いからです」(Ⅱコリント12:10)
