キング牧師50周年に思う

・新聞・テレビがM・キング牧師の暗殺50年を記念した行事がアメリカ各地で挙行されたという報道をしていました。彼は1968年4月4日に遊説活動中のテネシー州メンフィスで凶弾に倒れたのです。あれからもう50年前も経ったのか、いやまだ50年しか経っていないのか複雑な気持ちです。先だって、アムステルダムで彼の演説の言葉をもじって “We have a dream”というタイトルで、あらゆる差別撤廃を訴えていた展覧会の宣伝ポスターを見て、改めて彼の精神が現代の世界に大きな意味を持っていることを感じてきたばかりでした。50年前に彼が訴えていた課題はいったいどこまで解決に向かって前進したのか、なかなか図りがたいところがあります。世界に模範的な民主主義国家と自他ともに認めてきた国であり、これからの世界人類の共存の在り方を示してくれるのではないかと期待されていたこの国において、未だに人種差別はなくならず、何かますます強くなる傾向すら感じさせられる話が多くあるだけに不安は一向にぬぐえない状況です。
・私は10数年前、アトランタを訪れた時のことを思い出します。M.・キング牧師の生誕の地であり、牧師として父親とともに働いていた教会や彼が生まれ育ったダウンタウンにあるマーティン・ルーサー・キング・ジュニア歴史地区のキング牧師夫妻の墓にも詣でてきました。まさにノーベル平和賞にふさわしい偉大な働きをされた偉人の足跡を辿ることのできた素晴らしい体験でした。そしてさらに以前訪れたワシントンDCの有名なリンカーン記念堂で彼があの有名な演説をした場所と思われる踊り場の床に、彼の演説の一節の“I Have A Dream” (私には夢がある)の刻印があったことを思い出しました。何か急にキング牧師が身近に感じられ、彼の業績が改めて強く思い出されてくるのです。
・最近「〇〇ファースト」という言葉が流行語になってしまいました。為政者が好んで使い、また有権者がそれを支持してきた傾向が強くなってきています。自己中心で人種や宗教などいろいろな違いをもって、人間を差別しようという流れです。世界各地で起こっている難民問題や移民排斥、原理主義的になりすぎた宗教対立による争いが絶えない現代です。国連によると、この数世紀の世界人口の推移は、1800年代に約10億人、1900年代には15億人であったと記録されているが、2000年代に世界人口は61億人に達したと言われています。2017年現在すでに75億人と言われ、2100年までには112億人に達すると発表されています。この狭い地球上で、お互いに争いあっていて共存が可能なのでしょうか。真剣に考えなければいけない課題だと思います。キング牧師は「人は兄弟姉妹として、共に生きていく術を学ばなければならない。それが出来なければ、私たちは愚か者として共に滅びることになる。」と述べています。私には『おのおの己が事のみを顧みず、人の事をも顧みよ』という聖書の言葉がズシリと重く響いてきます。
(S・M)

カテゴリー: 未分類 |