命の重さ

・連日のように世界各国でテロと思われる事件が発生し、繰り返される報道に耳をふさぎたくなるような気持ちです。特に同胞がそれに巻き込まれたという話を聞くとより身近な、他人事とは思えない思いが一層強まります。さらに最近起こった殺人事件などは呆然とするばかりで、なぜこんなにも簡単に人の生命を奪うことを平然と行えるのでしょうか。大切なかけがえのない人の命が理不尽にも奪われていく昨今の現象は異常としか思えないのです。自分の主義主張と相いれないからと言って、問答無用とばかりに相手の命を抹殺するということは絶対に許されることではないはずです。
・20世紀になって人類は度重なる大きな戦争を繰り返し、実に数千万人いのちの尊い命が奪われてしまったという歴史の中で、命の尊さに麻痺してしまったのでしょうか。一挙に大量の人命を奪うことのできる核兵器が開発され、それが現在世界に数万発も保有されているという状態が一向に改められず、今日に至っているという現実には慄然とするのです。
・私はおよそ40年前のダッカにおける日航機ハイジャック事件を思い出します。150名余の乗客解放の代わりに日本赤軍の仲間9名の釈放要求に対し、時の内閣総理大臣福田赳夫氏が「人命は地球より重い」と述べて、身代金の支払いおよび、超法規的措置としてメンバーなどの引き渡しを決断したのです。この政治的判断については評価が分かれるところかもしれませんが、人間の生命を重んじた大切な言葉であったとは思います。この言葉の由来は定かではありませんが、新約聖書でイエスが述べられた「人はたとい全世界を得ても、命を損じたら何の得がありましょう。」という命の尊さを説いた言葉に通ずるものを感じます。ここで言う人の命の尊さは、金額的に評価されるものではなく、一端失われてしまうと再度取り返すことのできないかけがえのなさを訴えているのだと思います。
・ちょっと古い情報ですが、2012年9月に世界保険機関(WHO)が発表したデータによりますと全世界で一年間に推定80万人以上の人が自殺したというのです。40秒ごとに一人の割合で自分の命を絶つ人がおられるという報告で世界各国に自殺予防の啓発を呼び掛けていました。他人の命ではない勝手ではないかという理屈も出そうですが、自殺、他殺を問わず、私たちがどうやっても創り出すことのできない尊い人の命を安易に失わせるような行為は誰にも許されていることではありません。
・毎年この8月は、平和について考えさせられる時であり、戦争や暴力行為を絶対に起こさないという誓いの時でもあります。どのような小さな命でも、その重さは何物にも代えられない大切なものであることを深く心に刻み付けたいものです。(S・M)

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