「まだ時間はある?」

・今年はチェルノブイリ原発事故から30年が経過した節目の年にあたります。報道写真等でいまだに廃墟と化した街の様子を見るにつけ、放射能の恐ろしさをまざまざと感じます。そしてこれは5年前に我が国も体験し、いまだにその復旧の目途すらつかない現状を考えると決して他人事ではない話です。にもかかわらず、いったん止められた原発の再稼働や新規建設が話題になることは信じられないことです。ドイツでは東京電力福島第一原子力発電所の炉心溶融事故をきっかけに、エネルギー政策を根本的に変えて再生可能エネルギー拡大の道を進んでいます。一体我が国では何を考えているのでしょう。
・私は放射能の被害考えながら昔テレビで見た古い映画を思い出しました。それは「渚にて」というタイトルで、第三次世界大戦が起こり、大量に使用されたコバルト爆弾の放射能の影響を受け、北半球は全滅しその被害は次第に南半球に及んでいるという設定の中でまだかろうじて被害が到達してないオーストラリアのメルボルンを中心に繰り広げられる人間模様を巧みに描いた映画で、その通奏低音のように流れるテーマソングとともに忘れがたい印象を残している映画です。その中で、街の様子を描いた場面で多分キリスト教の救世軍と思われる人々が讃美歌を歌いながらチラシをまいている場面で横断幕がはためいているシーンがありました。その幕には「There is still time..Brother」(兄弟よまだ時間はある)という言葉が書かれていました。そして渚にてこの映画のラストシーンでは、次第に広がってきた放射能の影響を受けて多くの人が死に絶え、無人の廃墟となった街のシーンが次々に映し出されてきます。その最後に、あの横断幕が風にあおられながら揺れているのです。最後の最後で「まだ時間はある」というメッセージが意味するものは何なのか、深く考えさせられるものがあります。
・現時点で世界の核軍縮はなかなか進展を見せていません。いまだに全世界では2万発を超える核弾頭が保有されているといわれています。世界で唯一の被爆体験した我が国、そしてチェルノブイリに次ぐ福島原発の被災影響が今なお続く中にも関わらず、核に対する安易な姿勢が散見する現状には背筋の寒くなる思いがいたします。将来人類は放射能で滅亡するかどうかはわかりません。これは現在の人類の生き方に対する警告であると受け止めるべきではないかと思います。
・聖書では「あなた方は今がどんな時か知っているのですから・・・あなた方が眠りからさめるべき時刻がもう来ています」と警告を発しているのです。この映画のラストシーンも「眠りからさめるように」と呼びかけているメッセージとして受け止めなければならないのでしょう。        (S・M)

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