老いを創める楽しさ

・103歳になった現役医師,日野原重明先生の著書に「老いを創める」といタイトルの本があります。30年程前に著されたものですが、先生ご自身がその提言を実践されそのご活躍は多くの人びとに深い感銘を与え続けてきたものです。まさにこの言葉を地で生きた存在と言っても良いかもしれません。先生ご自身は、稀代の哲学者マルティン・ブーバーの「人は老いても、始めることさえ忘れなければ、いつまでも若くある」という言葉に触発されたようで、「老いを創める」とは日野原先生の造語だそうですがこのブーバーのに由来する言葉です。いつまでも前向きで真剣に生きることを考えてきた幾多の先人に教えられることがたくさんあります。
・この言葉を聞きながら、なぜか私はウルマンの「青春」という詩を思い浮かべています。
「青春とは人生のある期間を言うのではなく心の様相を言うのだ。優れた創造力、逞しき意志、炎ゆる情熱、・・・・,こう言う様相を青春と言うのだ。年を重ねただけで人は老いない。理想を失う時に初めて老いがくる。」とウルマンは青春とは心の持ち方なのだと歌うのです。年とともに肉体の衰えはいやでも感じさせらますが、それだけで人が老いるのではなく、心の持ち方によっては人は若く生きられるのだ、という言葉は大きな励ましになります。年齢を重ねても、絶えず希望を失わず、前進し続けることができるならばこんなに素晴らしいことはありません。
・旧約聖書にモーセという人物が登場してきます。彼は砂漠で羊を飼う仕事をしていましたが、80歳になった時に神から召命を受けて立ち上がり、当時エジプトの国で奴隷状態にあったヘブライ人救出のために奮闘する姿が描かれております。その後エジプトから民を率いて脱出したモーセは40年にわたって荒野をさまよった末、約束の土地を目前にして世を去ったという、物語です。壮年男子だけでも60万人と記されていますから、おそらく200万人に及ぶ大勢の人間を率いて試みた大脱出です。80歳という当時としてもかなりの高齢に達していたモーセでしたが、その行く先も定かでないにも関わらず敢然として立ち上がり神の声に聞き従い不可能とも思われた大事業を成し遂げたのです。まさに「老いを創める」と言っても良い、新しいものを求めて前進し続けていく高齢者の若々しい生き方そのものではないかと思います。
・「始めることさえ忘れなければ、いつまでも若い」のです。いたずらに過去の経験にとらわれることなく、いつも前に向かって前進を続けていける若い高齢者になりたいものです。(S.M)

カテゴリー: 未分類 |