1月=どこへ向かうのか(クォ・ヴァディス)

・2013年も多事多難を予想させるスタートです。国内外にはあまりにも多くの課題が山積していて、少しも明るい兆しが見えないのが残念です。私には第二次大戦終了後の混乱した日本の姿と重なって見えて来ます。むしろあの頃の方が復興への希望がみなぎっていたようにも思えます。外見では世界に類のない発展を遂げて有数の文明国の仲間入りをしていますが,内実はパサパサと乾燥した砂漠のような,心のひからびた人間の寄り集まりに過ぎず、実に潤いの乏しい寒々とした日々の連続です。

・私は以前から心にとまっている一枚の絵画を思い出します。それは国立近代美術館にある「クォヴァディス」というタイトルの油彩画です。1949年に描かれた北脇昇氏の作品です。北脇氏がどういう方か全く知りませんが,このタイトルはキリスト教に関連する言葉で、キリスト・イエスに対して弟子のペテロが「どこへ行かれるのですか」と質問した言葉に依っていることは間違いがありません。同じタイトルでポーランドの文学者シェンキーヴィッチが作品を発表し,ノーベル文学賞を受賞していることでも有名です。このクォ・ヴァディスとはラテン語ですが、「どこへ行くのですか」という意味です。この絵を見ていると戦後の混乱期に進路をどう取るべきか迷っている人々の姿が見えてきます。

・砂漠の中,一人の男が二つの道の岐路に立っています。左には大勢の人が列をなして進んでいます。しかし右には誰もいません。しかも先には黒雲が立ちこめ、嵐を予感させます。小さなザックをぶら下げた主人公が今岐路にたたずんでいる。見ている私に何か選択を迫ってくるこの絵は,何回見ても強いインパクトを与えるすごい絵だと思っています。

・戦後の混乱期にあった日本の姿を暗示しているものだと思いますが60年以上を経た現在でも,当時と状況は全く変化していないように感じます。砂漠のような乾ききった社会の風潮に、人間の心も潤いを求めつつもなかなか得られずに迷っている姿。かつて流行った「東京砂漠」という言葉が,今なおそのまま適用される現状に,私たちは改めて今、どこへ向かうのか判断を求められているのだと思います。

・この砂漠のまっただ中で、我々の心を休ませ,我々の来し方行く末を考えることができる真のオアシスが必要です。どの道を選択するのか判断が求められている時だと思います。

 私たちのオアシス館もそのような時に,何かのお役に立てれば良いと願っております。一息入れるために,ぜひお立ち寄り下されば幸いです。

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